よわよわのよる

鍵をもっていなくて、おうちに入れない。バイト終わりの23時くらい、家のドアの前でしゃがみこんでためいきをつく。家の中には父親がいたんだけど、ここ一週間くらいどうしても口をききたくなくて、顔を合わせないようにしていたから、かんたんにピンポンを押すことができなかった。母はゴールデンウィークで弟のところへカーテンの裾を直したりしに行っていて、うちにはいなかった。しょうがないので、しばらくドアの前の通路に立って、ぼーっと下を眺める。うちはマンションの5階だから、けっこう高い。ずーっと見ていたら、なにかを落としたくなったけどがまんした。どうしよう、どこか近くのお店に入ろうかとか考えながら、こういうときに、気軽にすぐ会おうと言える地元のともだちがいないことに気がついて、自分はなんてさびしい人間なんだろうと思った。同じマンションには同い年の女の子が4階と7階に住んでいて、幼なじみでなかよくしていたけど、中学校のときわたし以外の2人の仲が悪くなって、自分は間を取り持つ役目になってめんどくさくて、高校は3人ともばらばらになったし、今はもうほとんど会わなくなった。そういえばラインすらも知らない。

その日はそんなにさむくなかったから、このまま朝まで待ってもいいやと思った。トイレもしばらくは大丈夫そうだったし、アイフォンもipodも充電は十分だったし、読みたい本を2冊と手帳をもっていたから。でも冷静になって、あしたもバイトがあること、なによりお父さんと話したくないから家に入らずドアの前で朝を迎えた、というのはとんでもなくばからしいことだよなと思った。もうすぐ22になる21歳のやることではない。それに、朝になったら自動的に鍵が開くわけじゃないし、結局はどうやったってお父さんと顔を合わせないことにはうちには入れない。でもどうしても嫌だ。こんな自分は本当にばかでみっともなくてちっぽけで嫌になる。よわよわである。そんなことを考えていたらどうしようもなくさびしくなって、大学のともだちに電話をした。そうしたら、アイフォンを耳に当てるよりまえに「通話中です」みたいな文字が出てきて、一瞬ではじかれてしまった。すごくかなしかった。ひとりになりたくて人を避けたりつきはなしたりしてしまうときもあるくせに、こういうときはさびしくなって、自分はわがままだ。いろいろなもののツケがまわってきたんだなあと思って、後悔する。

5分後くらいにそのともだちが折り返し電話をくれて、おーいどうした?と言ってくれた。鍵がなくておうち入れない、家誰もいないの?いや、いるんだけど……と事情を説明したら、なにそれ、ふつうに謝って鍵あけてもらえよ(笑)と、ごもっともなことを言ってくれた。じゃあうちに来る?じゃなくて、こう言ってくれるともだちを持ったことをほんとうにうれしく思った。そうだよねありがとう、そうします、おやすみといって電話を切ろうとしたら、ちゃんと家入ったらラインしてね〜って言われて、また泣きそうになった。なんてしっかりしてるんだ、それにくらべて自分はどうしようもなくばかでみっともなくて以下略。1回目、ピンポンしたら反応がなくて、これはもしやお父さん云々のあれじゃなかったのかもしれないと別のレベルで不安になったが、2回目のチャイムで寝ぼけた父親が出てきた。あのね、鍵なくって、とかなんとか言いながら家に入れてもらって、お父さんは寝ぼけてるから、ああとかうんとかだけ言ってまたすぐふとんにもどっていった。リビングに行ったら、インターホンがちかちかしていて、さっきピンポンしたときの自分が映っていた。うつむいて、かなしそうな死にそうな顔をしていてめっちゃおもしろかった。それを笑って元気が出た。

こんなこと、好きな人がいて、その人に話して、なにやってんのばかだなーあほだなーって笑ってもらえればそれでいいのになと思う。

そうすればこんなブログなんて書かなくてすむ。

 

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