新しい下着

バイトの前に、新しい下着を買いに行った。

いつも買うお店のファミリーセールみたいなハガキをもらったので、しばらく買い替えていなかったし、好みのデザインのものもあったから、いつものサイズを選んでお店の人に声をかけて試着室に入った。

しばらくすると、サイズいかがですか〜?と声をかけてもらったので見てもらうと、アンダーはひとつさげて、カップはひとつ上げたほうがいいと言われた。なんだか、ちょっと痩せたのに胸は大きくなった、と言ってもらえたように思えてうれしくなったので、担当してくれたお店の人に「あの、新しい下着を買うのはすごく久しぶりなんですけど、これは(胸が)大きくなったということなんでしょうか?」と尋ねた。そうしたら、その店員さんは「ん〜そうですね〜、わたしもこの赤を持っているんですけど、このブラジャーはワイヤーの部分がすごく伸びるので、わたしもいつもよりひとつアンダーを下げたんですよ。そうするとやっぱり、カップがきつくなったりしてくるので、う〜ん、ブラジャーの形や素材にもよるので……」と言った。それを聞いて、とくに胸が大きくなったというわけじゃないという事実よりも、そのお姉さんがこれの赤のブラジャーをつけるという事実のほうばかりが気になってしまい、返事があいまいになってしまった。すごくていねいで、見た目も派手な人ではなかったので、なんかいいなあとおもってしまった。それからわたしは「見た目地味〜下着派手〜」というフレーズがあったリップスライムの曲はなんだったっけ、と考えた。

着替えて試着室を出て、じゃあこのサイズにします、これのパンツも二つくださいと言うと、そのお姉さんは、でもサイズは変わるものなのでよかったら定期的に測りに来てくださいね、とちょっとわたしのことを気遣ったのか、そう言ってくれた。

下着屋さんのかわいい袋をかばんの中にしまって、バイトに行った。バイトの最中、売り場の鏡の前をとおるたびに、ポーチを斜めがけしている自分の胸元がすこし気になってしまった。家に帰ってからは、母親に買った下着を自慢した。下着をひろげながら、かわいいでしょ、と言うと、かわいいねと言ってくれた。サイズの話はしようとおもってやめた。

というか、わたしは中高生の頃からずっと、べつにそこまで大きいわけではないけれど胸が大きくなることがすごく嫌で、ブラジャーはパットを外したりして実際のサイズよりもわざと小さいのをつけたりしていたのに、そういう嫌な感じがなくなってきていることに気がついてしまった。